フジアザミとパイオニア種

富士山の「フジ」の名を付けた高山植物はいくつかありますが、フジアザミもその1つ。富士山の砂礫帯に群生するアザミですが、富士山固有というわけでなく他の地域でも見られます。富士山では、御殿場ルートの双子山あたりの標高に群生しています。
フジアザミを見て驚くのはその大きさです。通常のアザミの3倍はありそうな頭花(紫の花が集まった部分)、根生葉と呼ばれる葉の部分も地面を這うように1メートルくらい広がっています。

ご存知の通り、富士山はスコリアと呼ばれる火山の噴出物の砂礫で覆われています。植生は他の山と比べて乏しく、植物にとっては非常に厳しい生育環境です。そのなかでも、フジアザミやオンタデ、イタドリは富士山のような裸の土地にいち早く根を下ろし群生しています。こうしたはパイオニア種(先駆種)と呼ばれ、荒れた土地を豊かにしていきます。たくさんの植物に覆われる前に定着してしまうという、植物の1つの生存戦略なのだそうです。

パイオニア種は樹木にもあり、皆さんもよくご存知のシラカバはその1つです。針葉樹の森にぽっかりとシラカバ林があれば、それは山火事や台風などで森が開け、そこにシラカバが侵入・定着し森を再生しています。