富士登山のリスクの1つに、急性高山病の発症があります。3700mを超える富士山の山頂の気圧(酸素の量)は平地の3分の2ほどです。個人的には、3200mを超える八合目を過ぎたあたりがから、酸素の薄さを感じ始めます。大きく息を吸わないと肺に空気が入ってこない感じです。「クロールをしていて息継ぎがうまくできていないような感じ」でしょうか。ツアーで歩いていても、ほとんどのお客様が同じように感じているようです。
これまで多くのお客様と富士登山をしてきて、だいたい1〜2割くらいの方に頭痛、吐き気といった急性高山病の症状が現れます。登山前の高度順応(五合目で1時間ほど過ごす)、深呼吸を意識しながら登る、呼吸を乱さないくらいゆっくり登る、しっかり水分補給をするなど、登山開始時、登山中に高山病予防を鉄則を何度もお伝えしていますが、それでも症状が出たり、症状が重くなって登頂断念をする人がいらっしゃいます。
先日、富士山を登った際、山頂でパルスオキシメーターで動脈血酸素飽和度(SpO2)を2回、測ってみました。SpO2/心拍数は、1回目79%/82、2回目82%/76でした。平地ではSpO2は97-100%で正常値、90以下だと呼吸不全で酸素吸入が必要なレベルです。富士登山がいかに体に負担をかけているのかわかります。
ある医学論文*では、急性高山病のリスクは、短時間にかなりの標高差を登ること(いわゆる弾丸登山)、登山するまでの日程が過密であることが挙げられています。また睡眠不足、寒冷、自分のペースで登山できないこともリスクだそうです。
富士登山をされる方、五合目で十分な高度順応をして、自分がきつくないペースで登りましょう。
*参考文献
「富士山登山における心拍数 ,SpO2および 自覚症状スコアの変化」、川崎医療福祉学会誌